タイヘイからCFJ、プライムからSBIへの債権譲渡

【問題の所在】

消費者金融等との継続的な取引中に債権譲渡がされ、債権者がA社からB社に変わったような場合の過払い金の計算方法が争いになる場合があります。

債権譲渡があった時点で利息制限法上限利率に引き直して、残高が残っていれば特に問題にならないのですが、問題は債権譲渡の時点で過払いになっていた場合です。

債権を譲り受けたB社は、過払いになっている債権は引き受けていないという主張をします。つまり、債権譲渡であって債務引受ではないから、過払い債務は引き受けておらず、債権譲渡前の過払い金についてはA社に対して請求するべきである、という主張です。

過払い金の金額は債権譲渡の前後を一連のものとして計算した方が大きくなりますし、さらに、このようなケースではA社が破産しているようなケースもあり、事実上B社に対して過払い請求するしかないという場合もあります。

債権譲渡の問題に関しては、クラヴィス、CFJ、SBIイコールクレジット等との間でよく争いになります。

プライムからSBIイコールクレジットへの債権譲渡

大阪地方裁判所平成20年2月29日判決より引用

原告は,過払金返還債務は金銭消費貸借契約の貸主の地位と切り離すことができないから,被告がプライムから譲り受けたものは,「既発生の債権債務と不可分に結合した契約上の地位」であるとか,過払金返還請求権はその後の貸付けに対し抗弁的に機能するから,貸主の地位の譲渡により,借主が過払金返還請求権を主張できなくなる理由はないとか主張する。しかし,貸金債権と過払金返還債務とは,発生原因事実を異にするから,実体法上不可分であるとはいえないし(当事者間で別段の合意がなけれいずれか一方だけを譲渡したり,引き受けることもできるはずである),前記のとおり,被告が本件債権譲渡によりプライムから譲り受けたものは,「契約上の地位」や「貸主の地位」ではない。原告の主張は,前提を欠くから,いずれも失当である。


これは、被告であるSBIイコールクレジットが、プライムから譲り受けた債権についての過払い金を、債権譲渡前のものについては支払えないという主張をしたことについての大阪地裁の判例です。契約上の地位の移転ではないから、SBIは過払い金返還債務を引き継いでいないという判断をしています。

プライムからSBIイコールクレジットに対して債権譲渡がなされたという事例においては、このようなSBI側の主張を認める判例が数多く見られます。しかし、プライムはすでに破産して清算結了しており、プライムに対しては過払い金返還請求は事実上不可能です。

これに対して、同様に債権譲渡を行ったトライトという会社の債権譲渡に関する、大阪高裁平成19年11月30日判決では、下記の理由から債権譲渡ではなく契約上の地位の移転であると認定し、債権の譲り受け人は過払い金返還債務を承継していると判断しました。

その理由は、
1、貸付債権と過払い金返還債務は性質上表裏一体であるということ
2、譲渡の対象となった債権は極度額リボルビング方式の取引に基づくものであるため、貸付債権と過払い金返還債務は一体的な取扱いがなされるべきであるということ
3、営業譲渡の前後を通じて契約内容がほぼ同一であること
4、契約上の地位の移転である旨譲渡契約書に明記していること
5、譲渡契約書に過払い金返還債務の承継をしないという表示はしていないこと
6、営業譲渡人は、営業譲渡後は過払い金の返還に一切対処しない予定であったこと
以上の6点です。

実は、SBIイコールクレジットの事例でも、このトライトの事例とほとんど変わるところはないのです。債権譲渡契約書に、契約上の地位の移転であるとは記載がありませんので、理由の4については異なりますが、ほとんどのSBIイコールクレジットの事例において4以外の理由についてはあてはまるはずです。

このほかにも、枚方簡易裁判所平成20年3月28日判決、木津簡易裁判所平成20年4月8日判決など、上記大阪高裁判決と同様の結論となった判例もあります。しかし、下記の最高裁平成23年3月22日判決が示されたことにより、この争点に関して、債権を譲り受けた会社に対する過払い金返還債務の承継が認められる可能性は、かなり低くなったと言えるでしょう。

タイヘイからCFJへの債権譲渡

タイヘイからCFJへの債権譲渡に関して、最高裁で下記のような判断が示されました(最高裁平成23年3月22日判決)。これにより、債権を譲り受けた会社に対する過払い金返還債務の承継が認められる可能性は、かなり低くなりました。

貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転すると解することはできない。


最高裁でこのように判示されたことにより、上記のSBIイコールクレジットの譲渡事案における大阪高裁平成19年11月30日判決で認められたような、「貸付債権と過払い金返還債務は性質上表裏一体である」という、いわばあらゆる債権譲渡事案において主張が可能な万能の主張は認められる可能性が極めて低くなったといえるでしょう。今後は、タイヘイからCFJへの債権譲渡の事案において、タイヘイとの取引の時代に発生した過払い金をCFJに対して請求するのは、難しくなりました。ただし、CFJに対して請求ができないというだけであって、タイヘイに対して請求することは可能です。

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